昨日、9月3日公開の映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説」を早速観に行って参りました。
この映画は、MCUのフェーズ4 の始まりを告げる作品としてリリースされましたが、既に多くの興行収入を記録し、世界中で1億7500万ドル以上の収益を上げています。また、映画評論家からも好評で、アクションシーン、アジア文化の 探求や表現、視覚効果、キャストなど多くの点において賞賛されています。
今回は、そんなこちらの映画について、どこよりも早く深く徹底解説していきます。
コミック版登場から映画製作まで
ダニエル・クレットン監督のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の25作目は、アジア人初のスーパーヒーローとして主演を果たします。つまり、この映画はMCUの新境地を開拓する作品といっても過言ではありません。
マンガ版の歴史
シャン・チーは1973年の「Special Marvel Edition #15]で初登場を果たしました。その後、1970年~1984年まで続いたアメコミのブロンズ時代でシャン・チーは相当な人気を博しました。しかし、80年代に入るとカンフーの熱狂は衰え、それと共にシャン・チーはたまにコミックに登場するくらいのモブキャラみたいな位置づけまで人気が落ちていきました。
モデルは「燃えよ!カンフー」の主人公?
スティーブ・エングルハートとジム・スターリンが生み出した、シャン・チーは、アメリカのABCテレビで1972年から放送されたドラマ「燃えよ!カンフー」の主人公であるクワイ・チャン・ケイン(Kwai Chang Caine、虔官昌)に触発を受けモデルにしたと言われています。
ブルースリーは関係している?
あくまで、着想はクワイ・チャン・ケインですが、実際にキャラクターを描く際にはブルースリーをモデルにしたとも言われています。マーベルコミックスでのシャン・チーの初期モデルは、ボブヘアカット、ヘッドバンド、そして赤いパンツを履いていたことで記憶されていますが、その後のモデルは、ブルースリーの武道やカンフー姿に非常に似ています。
映画「シャン・チー」制作秘話
30年の時を経て再びスポットライトがあたる
マンガ版では次第に、人気が低下していったシャン・チーですが、マーベルは彼の起用をずっと検討していました。むしろ、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の初期メンバーの1人として検討していたぐらいです。
そして、2010年頃になるとキャプテン・アメリカの作家であるエドブル・ベイカーによって、一時的にシークレット・アベンジャーズの一員になりました。
シークレット・アベンジャーズで登場
シークレット・アベンジャーズとはマンガ版アベンジャーズの隠密軍事作戦団体としてキャプテン・スティーブロジャース(元キャプテン・アメリカ)が立ち上げた組織となります。
そして、シャン・チーのシークレットアベンジャーズへの参加は2011年2月となり、その10か月後にはスティーブロジャースより受けた恩恵を十分に返済したと信じてチームを去りました。
7年後に「シャン・チー」の映画脚本が実現
そして、コミック版のシークレット・アベンジャーズを2011年に去り、7年後の2018年。マーベルスタジオはアントマン・エクスペンダブルズ・ワンダーウーマンなどを手掛ける映画監督デイビッド・カラーハンを雇い、MCUを舞台とした脚本依頼をお願い致しました。
2018年12月と言えばちょうどアベンジャーズ/インフィニティ・ウォーが公開された後ですので、脚本はエンドゲーム後の未来を見据えて依頼されていたのでしょう。
・シャン・チーのモデルは燃えよ!ドラゴンとブルース・リー
・コミック版でシークレット・アベンジャーズとして活躍
・2018年に映画製作本格始動
映画「シャン・チー」解説 ※ネタバレ注意
ストーリー概要
物語は数千年前から始まる
物語は数千年前に、ウェンウー(別名:マンダリン)が所持した10個のリングから始まる。ウェンウーはその偉大な力を意のままに、数世紀に渡り戦士や軍隊を集めていた。そして、長い歴史の中で多くの王国を征服し、政府を倒してきました。
最愛の妻と出会い、シャン・チーが産まれる
1996年、ウェン・ウーは勢力を拡大するために、さまざまな神話上の獣が生息していると言われているター・ローの村を探し始めました。彼は村の入り口を見つけましたが、村の保護者であるイン・リーによって立ち入るのを止められました。
そして、その後2人は恋に落ち、2人の子供、シャン・チーとシャンリーが誕生します。ウェン・ウーは家族と一緒にいるためにテン・リングスと組織を一度放棄します。
妻の死と家族の崩壊
しかし、妻イン・リーは最終的にテン・リングスの古いライバルであるアイアンギャングによって殺害されてしまうのです。それに憤慨した、ウェン・ウーは再びリング身にまといアイアンギャングを虐殺し、犯罪活動を再開します。
その後、シャンチーは武道の訓練を開始し、アイアンギャングのリーダーを暗殺するために14歳という若さで送られます。
シャン・チーはミッションを成し遂げましたが、殺害したことによるトラウマを抱えたためアメリカのサンフランシスコまで逃げ込みます。そこで彼は「ショーン」という名前を採用し別の人生を生きることを決めたのです。
6年の時が流れ、サンフランシスコでの生活
シャン・チーは親友のケイティと一緒にホテルの駐車係として働いています。ただし仕事に行く途中のバスの中で、シャンチーとケイティはレーザーフィストが率いるテン・リングス軍団に襲われます。シャン・チーは彼らを撃退しますが、母親から与えられたペンダントが奪われていることを発見し、次は彼の妹シャーリンが狙われることを悟ります。
シャン・チーは親友のケイティと共にマカオへ飛び立ち、妹を助けに向かい物語が進んでいくのでした。
ストーリーに出てきた4つの謎
ドラゴンと悪の住人の存在
ウェン・ウーという強力な武将の息子というバックグラウンドを持ちながら、サンフランシスコの駐車場係という、シャン・チーの旅はMCUシリーズのこれまで未開拓だった部分を解き放っている役割があります。
例えば、ウェン・ウーのような主要人物や、テン・リング自体の概念というものは、これまでのMCUシリーズと比較した場合、紹介はされているか大幅に具体化されています。また、映画が実際に公開されるまで、コミック版の読者はドラゴンという生命体が映画に実際に登場するのかも期待していたのではないでしょうか?
MCUはドラゴン時代へ突入!?
そして、今作では実際にドラゴンが登場しました。『マイティ・ソー バトルロイヤル』でも、ラグナロクでドラゴンと戦うシーンがありますが、表面を傷つけた程度のシーンだけです。『シャン・チー/テン・リングスの伝説』では、MCUがドラゴン時代に突入するための布石を打ったと言えるでしょう。
悪の住人:フィン・ファン・フーム
映画『シャン・チー』の中で、闇の住人「The Dweller inDarkness」と神話の村 ター・ロー「TheGreat Protector」の間の最後の戦いのシーンがありました。
闇の住人:フィン・ファン・フームは何世紀にもわたって暗い洞窟から抜け出そうとしてきました。そして、ウェン・ウーに対し、妻が悪魔の洞窟で捕らえられていると信じこませ、最終的には彼を操りテン・リングスの力で解放させました。この悪魔は、多くの村人とその他の戦闘員の魂を吸い上げパワーアップしていきます。
この、フィン・ファン・フームというキャラクターですが、地球人がドラゴンと呼ぶ地球外生命体はマクルアンと呼ばれています。このマクルアンが地球に存在している理由は、後に記載している【リングの起源】を参照ください。今後もMCUとドラゴンは密接に関わっていくかもしれません。
コミック版ではドクター・ストレンジの悪役
フィン・ファン・フームのような悪の住人は、コミック版では、ドクター・ストレンジの悪役でもあります。実際はクトゥルフのような悪魔で、映画「シャンチー」に見られるものとは似ていません。ただ、これらのエイリアンは遥か昔に地球に飛来し、テン・リングスによって眠りから覚める可能性が大いにあります。そして、今後もシャン・チーやドクター・ストレンジの敵となる可能性は大きいでしょう。
地下闘技場のモンスターは!?
シャン・チーの妹シャーリンの運営する地下闘技場でウォンと戦っていたモンスターが登場しました。こちらは予告編でも明らかになり、話題になっておりました。
実はこのモンスター、インクレディブル・ハルク(2008年)に登場したアボミネーション(Abomination)であることをディレクターのダニエル・クレットンは語っています
なぜアボミネーションの容姿が異なる?
そもそもアボミネーションは、アンチハルクとして、エージェントのエミール・ブロンスキーがスーパーソルジャーの血清と超人ハルクの血をミックスしたことで、変異し誕生したモンスターです。
モンスターに変化した彼は計り知れない力を得ただけでなく、彼の体を突然変異させ、サイズが2倍にもなり、彼の骨は肉体の様々な所から突き出ました。コミック版では、ブロンスキーの突然変異は、彼の耳の代わりにひれを持った魚のような外観も与えます。
しかし、映画『シャン・チー』では見た目は若干マイルドになり、ウォン(ドクター・ストレンジ)にも即負けし服従するなど、だいぶイメージが変わっています。
恐らく、その背後にある理由は、権利上の問題です。当時のインクレディブル・ハルクはエドワード・ノートンが演じていますし、MCUが始まる以前の作品なので若干変更されているのでしょう。ただ、それでも過去の作品とMCUが結びついたことは今後のシリーズにも大きな影響を与えるのではないでしょうか。
父の最後の息子への愛情
シャン・チーをMCUに持ち込むことになると、これまでに見たキャラクターのどのバージョンとも異なるはずの重要な要素が1つあります。それは、彼の親子関係です。
ウェン・ウーは自分の過ちに気付くのが遅すぎたために、息子が殺されるのをかばい、10個の指輪をシャンチーに渡した後に殺されました。ウェン・ウーは妻を亡くして以降、残忍な父へと逆戻りしたように見えますが、どこかずっと子供達へ愛情を持っていたと思います。全ては妻を取り戻して、元の生活に戻りたかっただけなのかもしれないです。
父親のアイデンティティを最終的に変えることでシャン・チーという映画はマーベルの中でも全く異なる側面への扉を開いたと言えるでしょう。
ケイティはマンガ版では実在しない?
今後のMCUシリーズのストーリーを前進していく上で欠かせない最も重要なキャラクターは、実はシャン・チーだけではなく、ケイティでもあります。
実はケイティはコミック版では一切登場せず、映画版オリジナルキャラクターとして発明されました。つまり、それが何を意味するのかは明白で、重要キャラクターとして何か役割を担っていると考えられます。
ただ、ケイティは、シャン・チーとは異なり、魔法の力や武術の訓練は受けておりません。ただ、代わりに並外れたドライビングテクニックや獲得した弓矢の能力を磨いていく可能性があります。これにより、今後ディズニープラスで公開される、ドラマ「ホークアイ」のケイト・ビショップのようなメンバーと共闘(あるいはライバル⁉)になる可能性があります。
こちらについては、今後のドラマ「ホークアイ」の展開を見ていく必要があります。
エンドクレジットの謎 ※ネタバレ注意
ウォン(ドクター・ストレンジ)の再登場
シャーリン、ケイティの活躍、そしてテン・リングス軍とTター・ローの村人の助けを借りて、シャン・チーは闇の住人を征服し、母の故郷ター・ロー村を救います。
そして、シャンチーとケイティはサンフランシスコに戻った後、この2週間で彼らに何が起こったのかを友人にレストランで必死に説明します。ただ、友人は「2週間までホテルの駐車場係やってたあなた達2人がスーパーヒーロー?」、頭でもおかしくなったのかといった感じで困惑していました。
その時突然、ドクター・ストレンジのウォンがバーの真ん中にあるトレードマークのポータルに現れ、シャン・チーとケイティの両方に今すぐ一緒に来るように頼みました。
まさかのヒーロー2人が登場
ウォンはシャン・チーとケイティをカマ―タージに連れ戻しました。そこにいたのは、なんとブルース・バナー(ハルク)とキャロル・ダンバース(キャプテン・マーベル)の2人でした。
そこではウォン、キャプテンマーベル、バナーがプライベートで指輪を調べていました。ウォンは、カマル・タージのアーカイブにあるものとは別に、ある種の信号を発しているようだと説明しています。ウォンの地図では、リングから送信される「ビーコン」はこの世界のどこかを指しているように見えますが、現時点では、それをさらに絞り込むことは不可能です。
ウォンがシャン・チーに対して、今このリングを持っているのか尋ね、「持っている」と回答すると、このリングはどこで入手したのか聞かれました。多分、1000年以上前かなと再び回答すると、ブルースは「こんな、物質は今までに見たことない。恐らく、もっと古いだろう。キャプテン・マーベルは知ってる?」と尋ねます。
しかし、キャプテン・マーベルも知らないと答え、「もう行かなければならないから、あとはブルースから連絡先を聞いて」とその場を去ります。
今後の重要なカギを握るリングの謎
このテン・リングが何を意味するのかという問題は、シャン・チーの続編、そして今後のMCU全体のストーリーの主要な要因になる可能性があります。
恐らくシャン・チーは今後、不思議な物質で創られた10個のリングで武装し戦うことになるはずです。このテン・リングは彼の父、ウェン・ウーが所持している間は不老不死にし、シャンチー自身にも同じ力を拡張することでしょう。
しかし、その不死の限界(老化や病気にならないという基本を除いて)は実際には劇中では説明されていません。リングを付ければ、完全な無敵状態なのか、完全な治癒をもたらすのか推測するのは難しいです。映画では、悪魔の住人の影響を受けやすくしたりするという意味合いも語られていましたが、これについても詳しくは説明されていませんでした。
ただ、間違いなく、このリングについては今後のMCUシリーズにおいて重要なカギを握っていることは間違いないでしょう。
リングの謎とエターナルズとの繋がり⁉
さて、コミック版では、10個のリングはMCUとは大きく異なっております。
まずそれらは、エネルギーを伝導するブレスレット型ではなく、ウェン・ウーが制御できる特定のタイプのパワーがそれぞれに割り当てられた指輪型のものです。なので、ミニインフィニティストーンのように機能を持っているイメージになります。
リングの起源
ただ、コミック版ではリングの起源について描かれています。それは、マクルアン(Maklu-IV)と呼ばれるエイリアン種族の一種の星間電源として作成されたリングが、宇宙船ごと誤って地球に衝突したということです。そして、このマルクアンという惑星は、何と映画で登場したドラゴンや悪魔の住人などが暮らしている惑星なのです。
つまり、地球に衝突した際にモンスターも飛来し、ター・ロー村の人々によって封印されたという歴史があったのかもしれないと推測できます。墜落した宇宙船は何世紀にもわたって休眠していましたが、マクルアンの探検家アクソン・カーをウェン・ウーが殺害し、彼は自分のために指輪を取りました。
キャプテン・マーベルはテン・リングにはエイリアンの惑星でも起源がないと述べていますが、それは彼女がマクルアンに出会ったことがないことを意味しているのかもしれません。もしかしたら、テン・リングはそれらのエイリアンに信号を送っている可能性もあります。あるいは、地球を標的とした別のエイリアングループかもしれません。
しかし、ウェン・ウーが10個のリングを身に着けている間、不滅の存在をリードするために何世紀も費やしたことを考えると、2021年11月公開の「エターナルズ」に関係していると思います。実際に「エターナルズ」も遠い惑星の話なので、もしかしたらそこで何かヒントが得られるかもしれないですね。
2つ目のエンドクレジットの謎
ドラマ「ロキ」のおかげで、私たちは既にMCUのマルチ・バースの考えを知っています。例えば、別の地球が存在したとして、ウェン・ウーやシャン・チーといった父子の争いは、シャンチーが現れていなかったとしても、誰かが止めていたはずです。その際はドクター・ストレンジやウォンといったキャラクターが倒していたことでしょう。これが、MCUのマルチ・バースです。
そして、2つ目のエンドクレジットでは、シャン・チーの妹のシャーリンが、テン・リングス軍団のトップとして玉座に座っていました。
そして、ター・ロー村の戦いで生き残ったテン・リングスの幹部と一緒に女性の歩兵を訓練し始めている様子が、2番目のポストクレジットシーンでした。
ウェン・ウーが権力を失った今、シャーリンがテン・リングスで何をしようとしているのかは明確ではありません。ただ、テン・リングスは非常に長い歴史の中で存在しており、広範囲にわたって暗躍していることが分かっています。
つまり、テン・リングスという組織は正義にも悪の両面において可能性は無限にあるということです。2つ目のエンドクレジットはそれを意味してのものだと考えられます。
感想まとめ
いかがでしたでしょうか?MCU25本目の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』はフェーズ4として重要な役割を果たしてくれました。
エンドクレジットではまさかの、ブルース・バナーやキャプテン・マーベルといった豪華メンツまで登場し、エンドゲーム以降も続いていくことを私達マーベルファンに伝えてくれました。
9/3(金)公開とまだまだ公開したばかりですので、是非皆様も劇場へ足を運んで観に行っていただきたいと思います!